F1レギュレーションの変遷
(F1 Regulation)

後初のグランプリ・レースは1950年5月13日、シルバーストーン・サーキットで行なわれた。このレースに出場したマシンは全部で21台。いずれのマシンも戦前からの流用品であった。戦争で疲弊した後でのレース再開である。むりのない話であろう。実は世界のモータースポーツ統轄団体「FIA」(国際自動車連盟)が誕生したのは、これより4年前の1946年で、FIAは発足と同時に新しいフォーミュラ(formula=規格)を制定している。クラス区分は排気量によりF1,F2,F3とし、F1にグランプリの名を冠した。そのF1の排気量は、残存するマシン、アルファロメオやマセラーティ、さらにERA、タルボ、デライエなど走行可能な状態から勘案され1948年〜1953年は、とりあえず過給器付き1500cc、加給機なし4500ccと決められた経緯を持っている。第1回グランプリは、このようなマシン構成で行なわれたというわけである。以下、年代順に主だった変更点(レギュレーション=規定)を見ていく。

海外オリジナル年表


1975年シーズン F1マシン寸法規定の一例
FIA /1975 YEARBOOK OF AUTOMOBILE SPORTより





1948〜1953年
 エンジン・キャパシティは、スーパーチャージャーなど過給器付きが1.5リッター、過給器なしが4.5リッターと定められた。


1954〜1960年
過給器付き750cc、過給器なし2.5リッター。1958年からは、使用するガソリンは一般市販の「オクタン価100」が義務付けとなる。

1954年、グランプリに復帰(フランス
GP)したベンツは、最初スポーツカー
まがいのボディシェル(W196)だっ
た。イギリスGPのスタート・シーン
(上)。その後、葉巻型になる。F1
史上、混走は珍しい風景なので掲
載。


1961〜1965年
自然吸気(normal aspiration)のみの最大1.5リッター、最低1.3リッターの排気量となる。これは必然的にF2の混走がなくなることを意味する。また車体の最低重量が、水とオイルを含んで450kgと規定された。

1966年〜(エンジンのみ1985年)
過給器付き1.5リッター、過給器なし3リッター。最低重量500kg。

1969年
車載消化器の義務付け。エアロフォイル規制(リヤにそびえ立つウイングの事故が続出したため、ウイングの高さ、幅の制限および部品の可動禁止措置が採られた。)

そびえ立つウイング(マトラMS)。
1970年
最低重量530kg。安全燃料タンク(fuelcell/safetybag=積層ゴム:耐油性の合成ゴムと合成繊維の布を多層させたもの)義務付け。

1972年
エンジン気筒数のリミット12気筒まで。最低重量550kg。

1973年
最低重量575kg。燃料タンク保護のための、モノコック側面衝撃吸収構造義務付け。燃料タンク容量最大250リッター。

1974年
リヤのオーバーハングを後車軸から背後1メートル以内と定める。

1976年
高い位置のエアインテーク禁止。フロント&リヤのオーバーハング、さらに制限加わる。最大高850mm。最大車幅2150mm。最大タイヤ幅21インチ(53cm)。リヤホイール径13インチ(33cm)。

1977年
最大高950mm。

1978年
250リッター燃料タンク1個のみ装備。(グランドエフェクト採用で、必然的にドライバー背後に置かれた)

1979年
全長は最大5000mmに。

1981年
最低重量585kg(1290lb)。スライディング・スカート禁止と共に最低地上高60mmの義務付け。

1982年
最低重量580kg(1279lb)。「サバイバル・セル・コクピット」の義務付け。

1983年
最低重量540kg(1190lb)。フラット・ボトム規定採り入れ。車輪は4輪、したがって6輪は排除。
 

1984年
燃料タンク容量220リッター(48.39英ガロン、58.11米ガロン)に制限。レース中の燃料補給禁止。

1985年
リヤ補助ウイング「ウイングレット」禁止。ノーズ・ボックス部分のクラッシュ・テスト義務付け。

1986年
最大排気量1500cc。燃料タンク容量195リッター/最大燃料使用量(42.89英ガロン、51.51米ガロン)に制限。したがってターボ・エンジン車のみの出場となる。

1987年
最大排気量は過給器付き(絶対過給値/ブースト圧4bar.)=1500cc、過給器なし=3500ccとなる。最低重量:過給器付き=540kg(1190lb)、過給器なし=500kg(1102lb)。過給器燃料タンク150リッター(33英ガロン)。多段式および液体冷却式過給器用インタークーラー禁止。

1988年
絶対過給値2.5bar。過給器燃料タンク150リッター、非過給は燃料使用量制限なし。ドライバーの足の位置、フロントアクスル・ラインの後方を義務付け。

1989年〜1993年
過給禁止。最大排気量は、自然吸気エンジンのみの3500cc以下。最低重量500kg。燃料使用量、制限なし(レース中の給油禁止)。


F1マシン主要寸法規定/1991シーズン開幕時
上記図が各寸法規定で、かなり厳しく規定されている。
ただし、ホイールベースと全長の制限はなく、トレッドも規制はないが、全幅は決まっているので、おのずから制限される。

重複するが、寸法以外のこの年の主だったレギュレーションを参考までに列挙する。
エンジン:3500cc以下/自然吸入式。4サイクル・レシプロ・エンジン、12気筒以下。
スーパーチャージャー、ターボおよび楕円ピストン使用禁止。すべてのチームは、事前に使用するエンジンを明示する。燃料タンク容量:制限なし。車重500以上。
安全性についての規制が強化され、それまでの、フロントのインパクト・テストに加え、コクピット側面およびタンク側面等への、静止的状態においての付加テストを実施。
車体に関するもの:すべてのクルマは、85kgの力を加えた時に、後方に5cm以上変形しないヘッドレストを装着し、その連続した面積は、80平方cm未満であってはならない。
ドライビング・ポジション時、ドライバーの、かかとおよび足がペダル上にあり、ペダルが不作動状態の時、それらはフロント・タイヤの中心線より前に出てはならない。.
車両の空力性能に影響をおよぼす、いかなる部品も不動でなければならない。また、それらは、シャシーに完全に固定されていなければならない。

illustration:Pioneer LDC 「F1 Grand Prix 1991」



1994年

最低重量505kg。第6戦カナダ・グランプリから520kgとなる。レース中の燃料補給OKに。

1995年
最大排気量は3000cc。自然吸気エンジンのみ。最低重量595kg(ドライバーを含む)。ドライビングを補助する電子制御装置の禁止。

1996年
最低重量600kg(ドライバーを含む)。

以降、現在に至る。