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第70回 ル・マン24時間レースへの招待
arange by kei-shirai
最終予選:6/13〜14 決勝レース:6/15〜16




最終回
伝統のクラシック・イベント、第70回ル・マン24時間レースは6月15日午後4時に、1周13.650km/hのサルテ・サーキットでスタートを切った。
そして翌16日午後4時、フランク・ビエラ(ドイツ)/トム・クリステンセン(デンマーク)/エマニュエル・ピロ(イタリア)組のアウディR8が、スタート4時間後トップに立ったそのままの位置をキープしてゴールラインをかすめ去った。
アウディR8とチームの強さは半端ではなかった。
結果的にアウディ・チーム3年連続勝利/1〜3位独占/しかも優勝ドライバー3人同一で、3年連続という史上初の記録を樹立しての、圧倒的な勝利であった。
4位はベントレー、5〜6位ダラッラという順位であった。
日本勢では、一時3位にまで上がった荒聖治/加藤寛規/ヤニック・ダルマス組のR8(アウディ・スポーツ・ジャパン・チーム・ゴウ)が、再三のトラブルにもめげず走り切り7位。
チーム・タイサン・アドバンの飯田章/余郷敦/西澤和之組のポルシェは総合21位・GTクラス3位であった。
近藤真彦が監督兼ドライバーを務めた近藤レーシングの童夢S101/ジャッド、ペスカロロ・スポーツから出場した片山右京組のクラージュC60/プジョー、寺田陽次郎組のオートエクゼ・マツダ等はいずれもトラブルのため、途中リタイアした。
もう一台の童夢/ジャッドを駆るオランダ・チーム(ヤン・ラマーズ/トム・コロネル/バル・ヒルブランド組(レーシング・フォー・ホーランド)は8位であった。


*kei’s eye*
”2002 ル・マンへの招待”を終えるに当たって。

私だけがそう思うのだろうか?
今年も、例年のようにローリングによる豪快なスタートを切り、24時間の長丁場を走り抜く伝統のクラシック・イベントがそこにはあった。
そして長距離耐久ならではのドラマを形成し、やがて感動のゴールシーンを迎える、これまたいつものシーンが、確かに今年もあった。
が、シリーズ第1回に書いたように、ここ数年のル・マン24時間レースは、正直言って”つまらなく、かつ物足りなさ”を感じるのだ。
そう思うのは私だけだろうか。
その主因は、トップグループのコンペティションが、あまりにもないからではないかと思う。
(自動車メーカーの相次ぐル・マンからの撤退も大きな要因だろうとも思う)
もちろん、ル・マンの長い歴史の中では、強力なワークス・チームの、頭からの独走で終わるというレースが数多く見受けられたのも事実だ。
確かに、アウディ・チームの鉄壁のレース運びがライバルをなくし、単調にさせている面も大きい。
しかしアウディとて、遊びで大金と時間をかけている訳ではない。
(メーカー)チームとしての思想を持って、決められたレギュレーションの元、堂々と出場してきているのだ。
ではなぜ、ここ数年強力なライバルが現れないのか?
その原因のひとつは、自動車メーカーのF1へのスイッチであり、もうひとつは逼迫する世界の経済不況ということが言えそうだ。
だから現実は、頭からトップ・グループを形成したワークス・プロトタイプカー数台は、最後までこれにくらいつくマシンがなく、先頭集団のコンペテションがないままに、レースが終了しているのがここ数年の傾向であろう。
つまらなくなったもうひとつの原因は、欲張った出場車両規定にもあるのではないかということ。
もちろん、ル・マンの歴史はレギュレーションの変更に明け暮れた歴史と言っても過言ではないくらい苦労してきた歴史でもあるのはよく承知している。
主催者が、時代時代に知恵に知恵を絞った末のレギュレーション設定だということもよく理解はしている)
だがここ数年のそれは、強力なワークス・チームの撤退による穴埋めのために生まれた産物と言ったら言い過ぎだろうか。
中途半端な出場車群によるのも、勝負を面白くなくしているのではないかと思うのだ。
さらにレギュレーションが複雑になり過ぎた嫌いも、要因のひとつに挙げられるのではないだろうか。
(例えばオープンボディとクローズボディとでクラス分けする必要があるのだろうか)
もうひとつ、ワークス・チームに寄りかかる危険を回避するあまり、広くプライベーターを受け入れたのはいいが、6月の本番までに決定される出場車両の分かり難さもある。
(ル・マン・シリーズと銘打った独特のシリーズと、分かり難い主催者の出場車両選考基準もある)
私は、なにもワーク・チームの対決が絶対などというつもりはない。
しかし中途半端なレギュレーションはもっといけないと思う。
プライベーターの対決というのならば、それはそれでいいし、面白いレースが世界中にあるのも事実だ。
さらにクラス区分を出来るだけ最小にして、公式予選を一本化すべきではないかとも思うのだ。
(GTカー/またはGTS、スポーツカー、プロタイプカーの3本で十分ではないのか。そしてプロトタイプカーが集まらないのならGTカー/GTS、スポーツカーだけでレースをすればいい)
いずれにしろ、パフォーマンスが拮抗する車両が多く集まるクラスを事実上メインとして、あらゆるクラスでコンペティションが行なわれるように強く望む。
(かつてあったシルエット・フォーミュラみたいな中途半端なレギュレーションは避けるべきだとは思う)
このまま同じレギュレーションで行なうと、ますますル・マンの魅力はなくなってしまう、と私は愁得る。
ある意味でそれは、テレビの関係者が口にしたように、ル・マンは「偉大なる草レース」と化してしまう。
だが、実質感の伴う「偉大なる草レース」大いに結構である。
ル・マンを愛すもののひとりとして、現実を大いに愁得るのだ。
言わずもがな、ル・マン24時間レースは、世界最大の長距離・耐久レースであり、その開催数は70回を刻む名誉あるクラシック・イベントなのである。
そのグレードは、ぜひ守っていきたいと思うし、守っていく義務をすべてのモータースポーツ・エンスージアストは負っていると思うのだ。
**
以上の記事に、ル・マンに対する現状認識の不足や、あるいは多少の誤謬があるかも知れない。
その節は、すぐにお詫びと訂正をしたい。
果たして、諸兄はどのように思われるか、ぜひご意見をお聞かせ願いたい。
2002/6/17



第3回
 
ことしのル・マン優勝・最有力候補、アウディR8. photo:Audi   

5月4日の車検第2日を経て翌5日、”予備予選セッション”(Preliminary Practice Session)が始まった。
予想通り、やはりアウディR8が速く、1、3、4位を占め、2位にダラッラ(ジャッド)車が着けた。
また5位にはMGローラがはいった。
(ワークス)アウディ・チームは、セブリング勝利の余韻を、そのままル・マンに持ち込んだ形となっている。
1〜10位までは次のとおり。

1)Audi 3596T(Audi Sport North America)Capello/Herbert/Pescatori
LMP900 3分30秒296
2)Oreca Dallara Judd 4000A(Playstation Team Oreca)Montagny/Sarrazin/Johansson
LMP900 3分32秒168
3)Audi 3596T(Audi Sport North America)Biela/Kristensen/Pirro
LMP900 3分32秒578
4)Audi 3596T(Audi Sport Team Joest)Krumm/PeterWerner
LMP900 3分33秒180
5)MG 1995T(MG Sport & Racing)Bludell/Bailey/Hughes
LMP675 3分33秒414
6)Bentley 3596T(Team Bentley)Wallace/Leitzinger/Van de Pole
LMP GTP 3分34秒556
7)Dome Judd 3994A(Racing for Holland BV)Lammers/Hillebrand/Coronel
LMP900 3分34秒690
8)MG 1995T(MG Sport & Racing)McGarrity/Kane/Reid
LMP675 3分35秒348
9)Oreca Dallara Judd 4000A(Playstation Team Oreca)Beretta/Johansson/Sarrazin
LMP900 3分34秒826
10)Courage Judd 3998A(Courage Competition)Cottaz/Derichebourg/Bjork
LMP900 3分35秒899

日本勢では、
チーム・ゴウ(アウディ・スポーツ・ジャパン:加藤寛規/荒聖治/ヤニック・ダルマス アウディ3596T)は、第4のアウディ・チームという存在だが、
この日、不運にもテルトルルージュでコース・アウトし、ガードレールにクラッシュ、この日の走行を切り上げた。
タイムは3分36秒074で11位の成績。しかし彼らは、本番に大きな期待がかかる存在であることに変わりはない。
童夢陣営は、7位のタイムを出したラマース/ヒルブランド/コロネル組が345km/hの最高速をマーク、関係者の度肝を抜いた。
が、近藤真彦率いる近藤レーシングは、トラブル続きで22番手。
今回で、ル・マン挑戦5回めとなる片山右京(ペスカロロ・スポーツ、ヘラリー/オルテリ組)は、この日、クラージュC60旧モデル(クラージュ・プジョー3200T)のマシンを駆ったが、ギヤボックス系のトラブルと、走行性が今ひとつシックリこず19番手に留まった。
オートエクゼ・モータースポーツの寺田陽次郎(ダウニング/ファーガス組)は、オートエクゼ・マツダ2616Rの燃料系トラブルで35位。
チーム・タイサン・アドバン(ポルシェGT3・3598A)の余郷敦/羽根幸浩組は42位。
また、ル・マンにデビューした”無限”4リッター・V8エンジンを搭載したパノス・ムゲン4000A(MBDスポーツカー・チーム、デュノ/デ・ラディゲス/グラハム組)は、3分49秒887のタイムで24位であった。
本番まであと1ヶ月強に迫ったサルテ・サーキットは、徐々に臨戦体制のムードとなってきた。さて....

*関連サイト*


Audi World Sitets

Dome Official Homepage

Mugen Official Web Site


第2回
チョッとニュースが古くなってしまい、誠に申し訳ないと思っています。
遅ればせながら、「2002ル・マン情報」の第2回をお届けします。
実は3月21日に、ACOから(96台のエントリーから)48台に絞ったリストの発表がありました。

そのリストによると、ことしの出場が確約されていた車両8台
(下記に記した予備選考通過チーム車両6台/紫色で表示+2チーム2台=Fresinger Motorsport、Seikel Motorsportチーム)を含めた48台です。
さらに6台のリザーブカーも加えられています
これらの中から日本に関係した話題をいくつか拾ってみました。

まず、
日本勢の出場チームと車両を列記します。
5)Team Go International J
LMP900 Audi 3596T
9)Kondo Racing J
Dome Judd 3994A
24)Autoexe Motorsports J
Autoexe Mazda 2616R
77)Team Taisan Advan J
PorscheGT3 3598A
以上4チーム4台が出場権を得ています。


3月31日、富士スピードウエイで行なわれた全日本GT選手権(JGTC)の合同テストで、片山右京選手が、ことしのル・マンに挑戦することを発表しました。
同選手にとって5回めとなるル・マンへの挑戦は、2000年に設立された「ペスカロロ・スポーツ」からの出場となります。
昨年12月、片山選手がダカール・ラリー出場のためル・マンを訪れた時、トヨタでル・マン24時間に2位にはいった時の監督、A・デ.コルタンツ氏(前トヨタF1テクニカル・ディレクター)に再会したのがきっかけでした。
 コルタンツ氏は、現在ペスカロロ・スポーツのテクニカル・ディレクターを務めており、同氏が片山選手を口説き落としたものです。
出場はLM”P”900クラスで、マシンはクラージュC60。
プジョーの3.2リッター・V6・ツインターボ・エンジンを搭載したもので、エリック・エラリー、ステファンヌ・オルテリとトリオを組みます。
オーナーのアンリ・ペスカロロ氏はかつてのF1ドライバーであり、ル・マンにも33回挑戦し、うち4回も優勝する名うてのドライバーです。
オーナーとなった2000年には、いきなりル・マンに4位にはいり、昨年は13位という実績を持つ強豪チームです。

このペスカロロ・チーム、チーム・ゴウ、近藤レーシング、オート・エクゼ、チーム・タイサン....の出場で2002年ル・マン24時間は一気ににぎやかに、楽しみになってきました。


photo:ACO

第70回 ル・マン24時間レースへの招待
第1回


スポーツ&プロトタイプカー・レースの最高峰、ル・マン24時間レースが70回の節目を迎える大会として6月15〜16日にわたって開催される。
その大綱がオーガナイザー(Automobile Club de L’Ouest=ACO)から3月5日発表された。
遅ればせながら紹介しよう。

主宰者によるとエントリーは、昨年の20%増の96台にのぼる。
その内訳はプロトタイプカー・クラスが44台、GTSとGTカー・クラスが52台。
ACOの選考委員会がここ数週間内に、レース出場の48台に絞る作業(予備選考)を行なうという。
具体的には、
ACOと強いつながりを持つAMLS(アメリカン・ル・マン・シリーズ)の2002年開幕戦/セブリング12時間(3月16〜17日)を待って、
選考委員会が結果を発表するということだ。
独特な出場資格システムを採用している最近のル・マン24時間レースだが、
しかし、既に下記の各チームは正式に予備選考を通過している。
昨年のル・マン24時間レースとALMSプチ・ル・マンおよびヨーロピアン・ル・マン・シリーズ(エストリル・ラウンド、廃止)の優勝チームである。

出場区分(2002 Specification)は
”Le Mans” Prototype =”LM”P/”LM”GTP
”Le Mans” Grand Touring =”LM”GTS
”Le Mans” Grand Touring =”LM”GT
以上3種類。

予備選考通過チームは次の通り。
Audi Sport Team Joest(Audi): Winner of the ”24 Heures Du Mans”2001
Audi Sport North America (Audi):Winner of the ”Petit Le Mans”2001
Pescarolo Sport (Courage Peugeot):Winner of the 1000km d’Estoril、European Le Mans Series2001
Corvette Racing Gary Pratt (Chevrolet Corvette):Winner in GTS of the ”24 Heures Du Mans ”2001
Corvette Racing Gary Pratt (Chevrolet Corvette):Winner in GTS of the ”Petit Le Mans”2001
Ray Mallock Limited(Saleen):Winner in GTS of the 1000km d’Estoril、European Le Mans Series2001


正式な出場チームの発表が待たれるところだが、
いずれにしろ、かつての壮大なスケールとエキサイティングなル・マン24時間レースをかじってきた者のひとりとして、
”原点”(強いアマチュア色?)に戻りつつあるクラシック・イベントのポリシーは尊重しながらも、
面白く、かつダイナミックなレース展開となる大会を期待したいところである。


photo:ACO

*2002年ル・マン24時間レース情報は、逐次掲載していく予定です*

関連記事:白井景執筆集「IMSAと24時間レース」