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昭和59年{1984年」発行のグラフ雑誌を本棚から見つけた。
「The Time Tunnel Circuit」{S書房刊}とタイトルがつけられたその小雑誌{別冊}は、それまでの国内外のモータースポーツ・イベントの特筆ものを、グラフ中心にまとめたものである。

私も、それらに登場するイベントには数多く携わり、かつ数本執筆もしている{編集委員にも名を連ねている}。
この本の中味は、壮絶なバトルあり、感動シーンあり、思わず笑いを誘うものあり、そして残念ながらショッキングな事故シーンも多数含まれている。
これらドラマ性溢れる要素をふんだんに採り入れて編集された当該誌は、モータースポーツ・ファン必見の一冊であると思う。
これらは、もちろんモータースポーツの歴史の流れの「ある部分」である。 が、これらの内容は、ひとつひとつが、当然ながらドキュメントであり、イベント関係者{ドライバーはもちろん、メカニック、オフィシャル、医療班、報道、そして観客など}すべてによって形作られたノンフィクションドラマそのものなのである。
言い換えると、ひとつのイベントは彼等{彼女等}の愛情と熱意、そして汗と血の結晶によって生まれているのである。

私は、なにも自慢話や懐古趣味で言っているのではない。この本を読み直すことによって、正直言って私自身忘れかけていた感動の嵐の中に引きずり込まれ、胸が熱くなってしまったことを告白する。
この感動は、いうまでもなくモータースポーツだけのものではなく、あらゆるスポーツにあてはまるものであることは判っている。が、少なくともモータースポーツに身を置いた者にとって言えることは、前記関係者の並々ならぬ{真摯な}努力なしには、これらドラマは生まれなかったと断言できるのだ。
そしてまた、この後もこれからも、これら関係者の努力により限りなくドラマは生まれていくに違いない。
オイルショックによる「イベントの開催危機」をはじめ、20世紀に幾多の危機を関係者すべての努力で乗り越えてきたわれらモータースポーツ・ファンにとって、幕を開けた21世紀のモータースポーツにも多いに期待したい。
                                            2001/1/5


Porsche Le Mans virsion(Lang Heck)