・13年前の”初夢” 公開!・


これが’93年F1の動きだ
ーセナがフェラーリへ!? トヨタ、ニッサンが参入か?



>>>早くもうわさ話がいっぱい

’92年F1世界選手権第5戦サンマリノ・グランプリ、予選2日目(5月16日・土曜日)イモラ・サーキットのパドックで、こんな噂が流れた。
「5月15日の夜、アイルトン・セナがフェラーリと、’93年以降の契約を結んだ--」

ふつう、ドライバーの移籍に関する動きは、秋口と相場が決まっているのだが、今年は4ヶ月近くも早く始まったのだ。
ウイリアムズのナイジェル・マンセルが史上初の開幕5連勝を達成。
いっぽう、ディフェンディング・チャンピオンのセナは、愛車マクラーレンが絶不調。
その不満は、セナの態度にも現れてくるほどだった。

”うわさ”といっても、あながちデタラメ話ばかりではないだろう。
というのは、セナ・クラスのドライバーはどこでも引っ張りだこで、フェラーリはもちろん、今年快進撃を続けているウイリアムズでさえ、昨シーズンからセナに熱いラブコールを送っているのだから。

ところで、ホンダが’92年シーズンを限りにF1から撤退するという話は、残念だが今のところ「公式の噂」のままである。
たとえ本当に撤退するにしても、シーズン途中にそれを発表することはまずないと思うが、来年も引きつづき参戦するという確証もない。

マクラーレンが、’93年にBMWパワーを積むという噂はこれまでにもあったし、”勝てるマシン”に乗りたいセナにとって、ホンダが万一F1を去った場合、セナの移籍はまったくない話ではないのだ。
それにしても時期的に早過ぎる移籍話ではあるが....。


>>>メルセデスの思惑とは

これより1戦前の第4戦スペイン・グランプリでのこと。
元ザウバー・メルセデス・チームのペーター・ザウバー氏が、マーチ・チームのドライバー、カール・ベンドリンガーらと、マーチのピットで長々と話し込んでいたという。

ザウバー・メルセデスは’91年シーズンでSWC(スポーツカー世界選手権)を撤退したばかりだ。
また、ベンドリンガーは、マーチに所属しながらも、ベネトンのシューマッハとともに、メルセデス・ベンツの契約ドライバーなのである。
いってみれば彼らは、ベンツの”来たるべき日”に備えて、F1の修業を積んでいる身なのだ。

ザウバー氏とベンドリンガーは、いったいどんな重要な話をしていたのだろう。
これまでの動きをつなぎ合わせると、こんなシナリオになりそうだ。

昨年の後半、メルセデス・ベンツは「F1には参戦しない」と公式発表している。
しかし、社内には「参戦しよう」という声があるのも確かなようなのだ。
メルセデスとしては、公式発表をした手前、表だってF1活動を進めることができないでいるのだ。

そこで、スポーツカーレースで強力なコンビを組んだザウバーが表に出て、まずマーチ・チームを買収。
シャシー/ボディ/足まわりとともに、現在のシャシーに搭載されているイルモア・エンジンを引き取ってしまう(もっとも、ザウバー氏は現在、イギリス・サリー州ブックハムで、ハーベイ・ポスレスウエイト設計のF1シャシーを制作中、秋には試走も可能との話もあるが...)。

うがった見方をすれば、メルセデスのシナリオは、第一弾の矢をこのザウバーのマーチ買収に当てるのである。
その上でザウバー・チームの名でF1にエントリー。
数年後にはメルセデスの名を冠したシルバーのマシンに、シューマッハとベンドリンガーの両者が乗り、サーキットを走りまわる。
もちろん、スリーポインテッドスターのエンブレムがそこには輝いている。
そんな光景が浮かんでくるのだが....。


>>>トヨタ、ニッサンは?

いっぽう、SWCに挑んでいる日本のトヨタのV10エンジン、アメリカでプロトタイプ・スポーツカーに搭載されて、鋭意テスト中のニッサンV12エンジン。
ともに超高性能であるのが評判で、いつでもF1に転用することが可能とも伝えられている。
これらのパワーユニットが、はたして近い将来、F1の世界に現れるのかどうか、これも興味あるところ。

また、ドライバーの話にも事欠かない。
浪人中のアラン・プロスト、インディ500の練習で負傷したベテラン、ネルソン・ピケ、腕の怪我を癒し、復帰が待ち望まれるアレッサンドロ・ナニーニ。
来年こそ、なんとかF1のステアリングを握ってもらいたい日本の中谷明彦、服部尚貴の両選手。
その他、国際F3000、全日本F3000の両選手権から、有望な若手ドライバー達が続々輩出している。

F1参入を表明していたはずのレイナード・チームは、その後どうなったのか、はたまた去就が注目されているジャガー・チームは....!?
’93年シーズンは、これらの動きとともに、早くも始まっている。

 1992年出版/「F1もの知り大百科・’92年版」/勁文社より。